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R&Bとは?ジャンルの歴史や代表的なアーティストを解説

R&B(リズム・アンド・ブルース)は、1940年代にアメリカで誕生した音楽ジャンルで、ソウルやヒップホップなど現代のポピュラー音楽に大きな影響を与えてきました。力強いビートと感情豊かなボーカルが特徴で、時代とともに進化を続けています。70〜80年代にはメロウで洗練されたサウンドが主流となり、90年代以降はポップや電子音楽との融合も進みました。

この記事では、R&Bの歴史や特徴、そして代表的なアーティストについて詳しく解説します。
・R&Bの魅力やルーツを知り、音楽をより深く楽しみたい人
・洋楽や邦楽問わず、しっとりとしたムードのある曲が好きな人
・歌唱力を磨きたい、リズム感を身につけたいと感じている人
・R&Bシンガーやサウンドの特徴を理解して、自分の音楽スタイルに活かしたい人



R&Bとは?ジャンルの歴史や代表的なアーティストを解説
実はR&Bという名前は、音楽が新しくなったから生まれたわけじゃなく、レコードを売るための作戦として作られたんです。
1948年、音楽雑誌のビルボードが、それまで差別的な名前で呼ばれていた、アフリカ系アメリカ人の方々向けの音楽のレコードをまとめて呼ぶために、「Rhythm and Blues (リズム・アンド・ブルース)」という新しい言葉を作ったんです 。これは、差別的な言葉を置き換えるための、社会的に大きな一歩でした。
名前ができた当初、R&Bは一つのサウンドに限定されず、ジャンプ・ブルースやドゥー・ワップ、初期のソウルなど、1950年代の色々な黒人音楽を指していました。R&Bは、音楽的な大発明よりも、文化を商業的にパッケージ化して大衆に届けるための市場戦略として機能し始めたんですね。
だからR&Bは、初期の段階から、商業的な成功や、より多くの人に聴かれること(ポップス化)を強く意識する傾向を持ってきた、と言えるでしょう。
第一章:R&BのDNA
R&Bは、名前の通りリズムと魂(ブルース)の音楽ですが、この基礎を作ったのは、主に3つの大切なルーツです。
- ブルース(魂の叫び): R&Bの「感情」の根っこの部分です。悲しいことや、心からの叫びを表現し、12小節という曲の基本的な形を提供しました。
- ゴスペル(感情のエネルギー): 教会音楽であるゴスペルは、R&Bに爆発的なエネルギーと、圧倒的な歌唱力をもたらしました。みんなで歌い合う「コール・アンド・レスポンス」のスタイルもここから来ています。
- ジャズ(洗練されたハーモニー): 複雑なコード(和音)や、曲をより深くするアレンジのセンスをR&Bに与えました。
特にゴスペルから受け継いだ「感情の爆発力」は、重要です。これは、ただ歌がうまいというだけでなく、音楽を通じて、コミュニティが心の中を表現し、癒やし合うための力になっていたんです。これが、後にソウル・ミュージックが社会的なメッセージを持つための土台となりました。
以下の表は、R&Bを構成する三つの音楽的ルーツとその影響を示しています。
表 1: R&Bを構成する三つの音楽的ルーツ
| ルーツ | 音楽的特徴 | R&Bへの影響(「リズム・アンド・ブルース」のどの部分か) | 代表的な継承ジャンル |
| ブルース | 12小節、感情的なメロディと歌詞 | 楽曲構成の基礎、魂の叫びの表現 (ブルース部分) | ロックンロール、初期ソウル |
| ゴスペル | コール・アンド・レスポンス、力強いボーカル | ソウルフルな歌唱技術、感情の爆発力 (ソウル/感情表現) | ソウル・ミュージック、コンテンポラリーR&B |
| ジャズ | 複雑な和声、即興演奏 | 洗練されたコード進行、アレンジの深さ (リズム/ハーモニー) | スムース・ジャズ、コンテンポラリーR&B |
第二章:R&Bの黄金期と社会的影響—ソウル、ファンク、モータウン
1960年代:ソウル・ミュージックと社会変革
1960年代になると、R&Bはものすごいスピードで変わっていきます。この頃、R&Bは教会音楽(ゴスペル)の要素をグッと強めて、もっと深い感情と力強い歌声が特徴のソウルミュージックに進化したんです。
そして、このソウルミュージックの登場で、「Rhythm and Blues」という言葉は、一時的にソウルに主役の座を奪われます。これは、R&Bが特定の音楽スタイルではなく、その時代を代表する黒人大衆音楽の総称という役割を担っていた証拠なんですね。
この時代の中心地の一つが、デトロイトでした。デトロイトのモータウンという会社は、R&Bやソウルを、誰にでも受け入れられるポップな形に磨き上げ、「モータウン・サウンド」を作り出しました。このサウンドは、人種の壁を超えて大ヒットし、クロスオーバーを果たしたんです。
さらに重要なのは、R&Bミュージックが、アフリカ系アメリカ人の誇りを表現する大切な手段となり、公民権運動などの社会を変える動きに、強い影響を与えたことです。ソウルは、R&Bがその名の通り魂を手に入れ、文化や政治にも影響を与える芸術へと昇華した瞬間だったと言えるでしょう。
1970年代:ファンクの登場
1970年代、R&Bはさらにリズムを追求していきます。そうして生まれたのが、ファンクです。ファンクは、R&Bの「リズム」の部分を極限まで強調した、もっと踊りやすい音楽として発展しました。特に、ベースラインを強調したり、タイトで繰り返されるリズムパターンが特徴です。
ファンクがR&Bから派生したことで、R&Bのリズムの要素が独立して進化し、後の音楽ジャンル、特にヒップホップに欠かせない土台を提供しました。このリズミカルな構造が、後にヒップホップのサンプリング文化や、「ニュー・ジャック・スウィング」という新しい音楽のビート重視のスタイルを生むことになります。
R&Bとストリートダンス文化の融合
ソウルミュージックの盛り上がりは、ストリートダンスの文化とも深く繋がっています。モータウン・サウンドに合わせて、男女がペアで踊るダンスが有名でしたが、ストリートではソウルダンスが広がり、今のストリートダンスの基礎を築きました。
ソウルダンスは、覚えやすいリズムと音楽で踊る、ストリートダンスの一つです。この文化から、「ファンキーチキン」(陽気なニワトリのコミカルな動き)や、「ロボットダンス」(今のポップダンスの基礎)など、色々な動きが生まれました。

ファンキーチキンなんて、名前からして楽しいですよね! この時代、R&Bやソウルは、ただ聴くだけじゃなくて、体を動かして、みんなと繋がるための、文化の中心だったんですね。
第三章:ニュー・ジャック・スウィング
1980年代後半:ジャンルの壁を破った融合
1980年代後半は、R&Bが歴史上、最も大きく変わった時期の一つです。この頃、R&Bの歌手は軟弱、ラッパーは「ストリート」というイメージがあり、お互いに避ける傾向があって、二つのジャンルは離れていました。
この壁を壊して、革命を起こしたのが、「ニュー・ジャック・スウィング」(New Jack Swing, NJS)なんです。NJSは、ヒップホップのリズムや作り方と、R&Bの都会的なサウンドを混ぜ合わせた、すごく新しいジャンルでした。
このNJSサウンドをリードしたのが、プロデューサーのテディ・ライリーです。1987年にこの言葉が生まれ、ライリーのスタイルは、「甘いメロディとビッグビート」を混ぜたものだと言われました。
NJSの絶大な影響力と音楽的特徴
NJSサウンドは、キース・スウェットの1987年のデビュー作などにより大人気となり、1980年代後半から90年代初頭にかけて、大流行しました。
NJSのすごいところは、今の音楽の基本構造を作ったことです。NJSが「ラッパーと歌手」の壁を壊し、ヒップホップのビートをR&Bのメロディに取り入れたことで、後のR&Bでラッパーがゲスト参加する文化や、電子的に作られた複雑なドラムパターンが使われることが当たり前になりました。
ヒップホップとR&Bを組み合わせるこの感覚は、後の90年代の音楽の基礎を作り、ポップミュージックの形を永遠に変えてしまったんです。
NJSによって、R&Bは再び「最先端」の場所に戻ることができました。ただ、NJSも90年代後半になると、ヒップホップがもっと広がり、NJSのポップすぎる部分が「若いリスナーのリアルさ」と合わなくなって、流行が終わっていきます。これは、R&Bが常にストリートのリアルな感覚(ヒップホップ)と、商業的なポップスの間でバランスを取る必要性を示していると言えますね。
第四章:コンテンポラリーとオルタナティブ
コンテンポラリーR&Bの定義と高度な技術
1980年代初めに登場した「コンテンポラリーR&B」(CR&B)は、NJSが作ったヒップホップとの融合路線を受け継ぎながら、もっと洗練された音作りと、高度な歌唱技術を追求しました。
CR&Bの音楽的な特徴は、ソウルやディスコから来た歌い方をミックスしている点です。豪華な曲の作り方、ヒップホップっぽい電子的なリズム、そしてなめらかに整えられた音が特徴です。
このジャンルを象徴するマライア・キャリーは、5オクターヴ半という驚異的な音域を操り、CR&Bを世界的なメインストリームへと押し上げました。
ジャンル分類を巡る論争
CR&Bが商業的に大成功したことで、ジャンルの分類を巡る議論も起こりました。CR&Bは「コンテンポラリー・リズム&ブルース」の略ですが、これって実際には、「ポップスなんだけど、歌っているのが黒人アーティストだからR&Bと呼ぶ」という、ちょっと遠回しな言い方になっている、という意見も強くあります。
マライア・キャリーやホイットニー・ヒューストンが世界で成功したことで、CR&Bは高い技術と洗練された音でポップチャートを席巻しました。この「ポップスとの完全な融合」が、CR&Bを人種的なマーケティングカテゴリに変質させてしまったという側面があるんです。
黒人アーティストが作ったポップソングが、人種的な理由でR&Bとして扱われる、という問題が指摘されており、これはR&Bが市場のカテゴリとして生まれた歴史 2が、今も影響していることを示しています。
R&B主要サブジャンルの変遷
以下の表は、R&Bがどのようにして時代と共にその形を変え、主要なサブジャンルへと分化していったかを示しています。
表 2: R&B主要サブジャンルの変遷と特徴
| サブジャンル | 主な時代 | 音楽的特徴 | 文化的役割とプロダクション |
| ソウル | 1960年代 | ゴスペル由来の深い感情表現、力強いボーカル | 公民権運動との関連、モータウン・サウンドによる洗練 |
| ニュー・ジャック・スウィング (NJS) | 1980年代後半〜90年代初頭 | R&Bメロディ+ヒップホップのビート、シンセサイザー | Teddy Rileyによる革命、歌手とラッパーの融合、ダンスミュージックへの影響 |
| コンテンポラリーR&B (CR&B) | 1980年代〜現代 | スムースなプロダクション、ディスコ/ソウル由来のボーカル技巧、電子的なリズム | ポップスとの境界線の曖昧化、ボーカリストの技術の極大化 |
| オルタナティブR&B (PBR&B) | 2010年代〜現在 | 実験的、アンビエント、トラップ要素、非伝統的なテーマ | ジャンルの再定義、ストリーミング時代における多様性の表現 |
第五章:R&Bの歴史を築いた五大アーティストとその功績
| アーティスト名 | 主要な活躍期 | 主要ジャンルへの貢献 | R&B史における位置づけ |
| アレサ・フランクリン | 1960年代〜70年代 | ソウル/R&Bの母体、力強い社会的メッセージ | R&Bの精神的ルーツ、ゴスペルとソウルの完璧な融合 |
| アル・グリーン | 1970年代 | スムース・ソウルの確立、洗練されたロマンス | 70年代R&Bの官能性を定義 |
| ホイットニー・ヒューストン | 1980年代後半〜90年代 | ポップスとCR&Bの完璧な融合、圧巻の歌唱力 | R&Bボーカル技術をグローバルなメインストリームに押し上げる |
| マライア・キャリー | 1990年代〜現在 | CR&Bの定義、ヒップホップとの融合、驚異的なボーカル技術 | 現代R&Bの商業的・技術的テンプレート確立 |
| ザ・ウィークエンド | 2010年代〜現在 | オルタナティブR&Bの主流化、ダークで実験的なサウンド | R&Bをジャンルレスな未来へと導くフロンティア |
R&Bの素晴らしい物語は、それぞれの時代を代表する、偉大なアーティストたちによって作られてきました。ここでは、その歴史の中で特に影響力が大きかった5人のアーティストを紹介し、彼らがR&Bにどんな貢献をしたのかを解説しますね。
アレサ・フランクリン (Aretha Franklin) – ソウルの女王
アレサ・フランクリンは、R&Bとソウルの「魂のルーツ」を作った、まさに象徴のような人です。彼女の音楽は、ゴスペルから受け継いだ力強い歌声と、心からの感情表現が特徴です。
「Respect」のような曲に代表されるように、社会的なメッセージを込めた歌い方で、公民権運動の時代に大きな影響を与えました。彼女は、R&Bの魂の深さを決めた人物だと言えます。
アル・グリーン (Al Green) – スムース・ソウルの象徴
アル・グリーンは、1970年代のR&Bを代表するアーティストです。彼の音楽は、洗練された音作りと、優しく、色っぽい歌声が特徴で、R&Bにロマンティックでメロウな要素を深く根付かせました。
彼の「Let’s Stay Together」などの曲は、70年代R&Bの官能的なムードを定義づけ、後のスムーズR&Bの基礎を築きました。
ホイットニー・ヒューストン (Whitney Houston) – 圧倒的な歌姫
ホイットニー・ヒューストンは、1980年代後半から90年代のCR&Bの商業的な成功を決定づけた、信じられないほどの歌唱力を持つアーティストです。彼女はR&Bの高度な歌の技術を、完璧な形で世界のポップ市場に広げたパイオニアです。
その広い声域とドラマティックな歌唱は、「I Will Always Love You」などの曲で示されるように、R&Bの歌手がポップスターの頂点に立つための道筋を作りました。
マライア・キャリー (Mariah Carey) – コンテンポラリーR&B
マライア・キャリーは、現代CR&Bの商業的・技術的なスタイルを確立した、ものすごく重要な存在です。彼女は5オクターヴ半の音域を自在に操り、究極の歌姫と呼ばれています。
ソロアーティストとして全米1位の曲数19曲、首位獲得週数97週間という、ものすごい記録を持っています
彼女は、古いR&Bとモダンなポップスのバランスを常に取りながら、ヒップホップアーティストとのコラボレーションを当たり前にし、CR&Bのサウンドを定義づけました。彼女のキャリアは、R&Bが持つ「最新のヒップホップ文化を取り込む柔軟さ」を象徴しています。
ザ・ウィークエンド (The Weeknd) – オルタナティブR&Bの未来
ザ・ウィークエンド(The Weeknd)は、2010年代以降のオルタナティブR&Bの流れを、主流にしたバンドの一つです。彼のサウンドは、R&B、トラップ、エレクトロニカを混ぜた、暗くて実験的なもので、従来のCR&Bの型から抜け出しました。
彼は、ダークなテーマや内省的な歌詞をR&Bに持ち込み、ジャンルの境界線を曖昧にすることで、R&Bが再びポップチャートの頂点に立つための、新しい方法を見つけました。彼の存在は、R&Bが持つもう一つの重要な側面、「音楽の新しい領域を開拓する力」を体現しています。
まとめ
R&Bは、その時代の空気や文化を映し出しながら進化してきた音楽ジャンルです。ルーツの深いソウルフルな楽曲から、現代のスタイリッシュなR&Bポップまで、多様な魅力を感じられるのが大きな特徴といえるでしょう。ビートやメロディー、そして歌声に込められた感情が、聴く人の心を自然と揺さぶります。今回紹介した内容を参考に、お気に入りのR&Bアーティストを見つけて、ジャンルの奥深さをぜひ体感してみてください。

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