アニメ『SPY×FAMILY』OP・ED、劇場版主題歌を解説

『SPY×FAMILY』は、シリーズ累計発行部数3,500万部を超える人気漫画です。

スパイの父、殺し屋の母、超能力者の娘という“仮初めの家族”が、それぞれの正体を隠しながら共に暮らすという設定が最大の魅力。

シリアスな諜報戦と、家族のほのぼのとした日常が絶妙に交差する展開は、笑いと感動のバランスが秀逸です。

アニメ化によりさらに注目を集め、主題歌もその世界観を彩る重要な要素となっています。

『SPY×FAMILY』の世界観を支えた珠玉のBGMが、この一枚に。日常も、スパイ活動も、音楽で何度でも楽しめます。

SPY×FAMILYの作品概要

スパイ、殺し屋、超能力者――特殊な能力を持つ3人が“仮の家族”として生活する『SPY×FAMILY』。そのユニークな設定とテンポの良いストーリー展開は、幅広い世代から支持を集めています。ここではアニメ版の制作背景や物語の内容について詳しくご紹介します。

◾️アニメの制作会社

アニメ『SPY×FAMILY』は、WIT STUDIOとCloverWorksの共同制作によって生まれました。WIT STUDIOは『進撃の巨人』や『ヴィンランド・サガ』などの迫力あるアクション描写に定評があり、CloverWorksは『ぼっち・ざ・ろっく！』や『ホリミヤ』で繊細なキャラクター表現を得意とするスタジオです。2社の得意分野が見事に融合することで、スタイリッシュなアクションと温かみのある日常が両立した映像作品に仕上がっています。

◾️あらすじ

西国の敏腕スパイ〈黄昏〉は、極秘任務“オペレーション〈梟〉”を遂行するため、偽装家族を作ることに。そこで彼は“精神科医ロイド・フォージャー”として活動を始め、孤児院から娘アーニャを迎え入れます。さらに妻役としてヨルという女性と結婚しますが、実は彼女は殺し屋。加えてアーニャは人の心が読める超能力者という秘密を抱えています。互いの正体を知らぬまま、3人は平和を守るための仮初めの家族生活を送ることになるのです。シリアスな任務と、笑いや感動に満ちた日常が交差するストーリーが展開されます。

◾️主な登場人物

◆ロイド・フォージャー（黄昏）｜声：江口拓也
　冷静沈着な敏腕スパイで、コードネームは〈黄昏〉。西国の平和のため、偽装家族を作って任務に挑む。普段は精神科医として活動しているが、その裏で数々の極秘任務を遂行している。

◆アーニャ・フォージャー｜声：種﨑敦美
　孤児院でロイドに引き取られた少女。実は人の心を読むことができる超能力者。まだ幼く、勉強は苦手だが、無邪気な性格と豊かな表情で周囲を和ませる存在。

◆ヨル・フォージャー｜声：早見沙織
　市役所に勤務する一見おっとりとした女性。しかしその正体は“いばら姫”というコードネームを持つ凄腕の殺し屋。世間体を守るためロイドと偽装結婚するが、家族としての絆も次第に深まっていく。

◆ボンド・フォージャー｜声：松田健一郎
　未来を予知する能力を持つ大型犬。フォージャー家の一員となり、アーニャとの強い絆を見せる。大きくておっとりとした見た目ながら、いざという時には頼れる存在。

◆フランキー・フランクリン｜声：吉野裕行
　ロイドの協力者で、情報屋として活動している。軽妙な性格で、時に任務の手助けをし、時にフォージャー家の日常にも関わってくるムードメーカー的存在。

◆ユーリ・ブライア｜声：小野賢章
　ヨルの弟で、東国の秘密警察に所属するエリート。姉思いな一方、フォージャー家の秘密を暴こうと目を光らせるなど、物語のスリルを生む人物のひとり。

SEASON1

アニメ『SPY×FAMILY』第1期は、仮初めの家族が少しずつ“本物”になっていく過程を、ユーモアとあたたかさのなかで丁寧に描いています。日常の裏に潜むスパイ活動や心のすれ違いなど、緊張と和みが交錯する物語に寄り添うように、音楽もその雰囲気を表現。

◾️【第1クールOP】ミックスナッツ / Official 髭男dism

Official 髭男dismの『ミックスナッツ』は、緻密なリズムと展開が印象的な楽曲です。冒頭から軽快に跳ねるピアノとドラムの絡みが耳を引き、息をつかせぬ展開で物語のテンポ感を支えています。家族という形を持ちながらも、それぞれが秘密を抱えるフォージャー家の関係を、ナッツにたとえて描いています。ジャズを基調としつつも、ポップスとしての親しみやすさを保った構成は、多くの人の心をつかみました。ヴォーカルの高低を活かした起伏ある旋律と、演奏の緻密なアレンジによって、世界観を音楽面から強く印象づけています。アニメのスタートにふさわしい活気と緊張感が共存する1曲です。

◾️【第1クールED】喜劇 / 星野源

星野源が手がけた『喜劇』は、静かに寄り添うような音像が心地よく響く楽曲です。ゆったりとしたテンポに乗せて奏でられる温かい音の重なりは、1日の終わりにふさわしい安心感を届けてくれます。アニメの中で描かれるフォージャー家の日常が、目に浮かぶような情景の広がりを持っています。優しく柔らかな歌声と、穏やかなギターの音色が、静かに余韻を残しながら物語を締めくくってくれます。曲全体に流れる穏やかな空気が、どこか守られているような印象を与えてくれる1曲です。深みのあるアレンジが聴きどころで、聴けば聴くほど味わいが増していきます。

◾️【第2クールOP】SOUVENIR / BUMP OF CHICKEN

BUMP OF CHICKENがエンディングテーマを担当した『SOUVENIR』は、駆け抜けるようなリズムと透明感のある音作りが魅力の楽曲です。軽やかに弾むギターと、全体を包むようなシンセのサウンドが、希望と覚悟を同時に感じさせてくれます。登場人物たちの関係や内に秘めた想いが、音を通して自然に浮かび上がってくるような印象です。伸びやかなヴォーカルは余白を活かしながらも、確かな意志を感じさせる歌い方で、アニメの物語と深く結びついています。ドラマ性を引き立てる構成と緩急のあるアレンジが、作品への没入感を高めてくれる1曲です。

◾️色彩 / yama

yamaの『色彩』は、静けさの中に情熱を感じる構成が印象的な楽曲です。イントロから広がる空気感が、映像の余韻と呼応するように丁寧に展開していきます。日常と非日常が混ざり合うアニメの世界観を、そっと包み込むようなサウンドで表現しています。軽やかさと影のある質感が共存するトラックは、聴き手の感情にじんわりと染み込んでいきます。高音域のヴォーカルが浮遊感をもたらしつつも、地に足のついた演奏が全体を支えており、心に残る余韻を生み出しています。作品の最後を穏やかに締めくくる役割を果たす、印象的なエンディングです。

SEASON2

第2期では、ロイドたち“フォージャー家”の日常が一層にぎやかに、そして奥行きを増して描かれます。新たな事件や人物が登場することで、物語はより多層的になり、それにあわせて音楽の持つ役割も広がっていきました。主題歌には作品のテンポ感や空気感を保ちながらも、これまで以上にリズムや構成に工夫が施され、登場人物たちの変化や成長が音を通じて伝わってきます。

◾️クラクラ / Ado

Adoの『クラクラ』は、エネルギッシュなエレクトロ・ポップサウンドが特徴的な楽曲です。イントロの重厚なビートと、Adoらしい圧倒的なヴォーカルが組み合わさり、一気にその世界に引き込まれます。歌詞には、感情の高ぶりや混乱した心情が表現されており、キャラクターたちの心の葛藤を音楽を通じて伝えています。メロディーは力強く、ダイナミックでありながらも、どこか切ない響きを持ち合わせており、聴く人に深い印象を与えます。Ado特有のエモーショナルな歌声と、テンポよく展開するサウンドが絶妙に絡み合い、アニメのシーンに完璧にマッチ。その一方で、歌詞の隠れた意味や、聴くたびに感じる微妙な変化がこの楽曲の魅力です。聴いているうちにどんどんとその世界に引き込まれ、繰り返し聴きたくなる1曲です。

◾️トドメの一撃 feat. Cory Wong / Vaundy

Vaundyの『トドメの一撃 feat. Cory Wong』は、ファンキーでキャッチーなリズムが特徴的な楽曲です。イントロから心地よく跳ねるベースラインと、クールなギターサウンドが、楽曲にダイナミックな躍動感を与えています。Cory Wongのギタープレイは、特に楽曲にアクセントを加え、グルーヴ感を強調しています。「決定的な瞬間」や「最後の一撃」の意味が込められており、作品における重要な場面を表現するかのような雰囲気が漂っています。Vaundyの特徴である多彩な音楽的要素が融合し、リズムとメロディーのバランスが絶妙です。躍動感あふれるアレンジと、少し遊び心のあるヴォーカルが聴く者を引き込んでいきます。一度聴くと忘れられない印象を残し、アニメのエンディングに新しい風を吹き込む、力強く個性的な1曲です。

劇場版 SPY×FAMILY CODE: White

劇場版『SPY×FAMILY CODE: White』では、テレビシリーズとはひと味違う、スケールの大きな物語が展開されます。ミッション中の家族旅行を軸に、フォージャー家が新たな困難に立ち向かう姿が描かれるなか、音楽も物語の深みを支える重要な要素。

◾️SOULSOUP / Official 髭男dism

Official 髭男dismの『SOULSOUP』は、躍動感のあるポップなサウンドがジャズとミックスされた楽曲です。イントロから引き込まれるようなピアノの旋律と、疾走感のあるドラムビートが鮮烈に響き渡ります。物語の中での緊迫感と希望の両方を巧みに表現しており、力強さと切なさが同居したメッセージが込められています。また、サビに向かうにつれて広がるメロディーが心を打ち、音楽の盛り上がりが作品のクライマックスにピッタリな印象を与えます。キャッチーなメロディーと映画のストーリーを思わせる歌詞のバランスがこの楽曲の大きな魅力であり、劇場版のオープニングにふさわしい迫力を感じさせるでしょう。作品のテーマとも見事にリンクした曲で、物語の世界観を豊かに彩っています。

◾️光の跡 / 星野源

星野源の『光の跡』は、シンプルで温かみのあるメロディーが印象的な楽曲です。静かなイントロから始まり、徐々に感情を高めるような音の広がりを見せる構成が美しいです。未来への希望と過去の悔いを乗り越えて進む力強さを表現しており、キャラクターたちが歩む道を象徴するような内容が込められています。星野源の優しくも力強い歌声が、感情豊かに物語の余韻を残します。曲調はシンプルながら、深い感情が込められており、映画のエンディングにピッタリな穏やかな印象を与えます。星野源の楽曲にしか出せない、静かな中に秘められた強さがこの楽曲をさらに魅力的にしています。物語が終わりを迎える時に流れるこの曲は、観客の心に残るエンディングを作り上げる重要な役割を果たしています。

アーニャ・インスパイアソング

◾️GOOD DAY

アーニャの明るく前向きな性格が反映された、ポップで元気な楽曲『GOOD DAY』。アニメの第1期第24話で挿入歌として登場し、アーニャの純粋で無邪気な感情が表現されています。曲は軽快なリズムとキャッチーなメロディーが特徴で、聴いていると自然と笑顔になれるような、心温まる雰囲気を作り出します。どんな困難にも前向きに向き合うアーニャの姿勢が描かれており、彼女の無邪気な笑顔が浮かぶようなポジティブなエネルギーが溢れています。楽曲はそのシンプルな構成にも関わらず、聴く者に元気を与え、心を軽くしてくれるような魅力があります。 アーニャの無邪気でキュートなキャラクターをより引き立てる、優しくも力強いこの楽曲は、アニメの重要なシーンを彩るのにぴったりの一曲です。

挿入歌

『SPY×FAMILY』の挿入歌は、各話の印象を深く刻み込む大きな役割を果たしています。物語のテンションが大きく変わる場面や、キャラクターの感情が揺れる瞬間に流れる音楽は、言葉以上に心を動かします。特に(K)NoW_NAMEが手がける楽曲は、作品の空気に寄り添いながら、静けさや緊張、そして温もりまでも繊細に表現しているのもポイント。

◾️TBD(アニメ第1期第5話)

(K)NoW_NAMEの壮大なストリングスを活かしたアレンジが響く楽曲です。第5話で使用され、ロイドがアーニャのもとへ敵をかわしながら向かう物語の緊迫感を見事に引き立てる役割を果たしています。楽曲は、繊細なピアノのメロディーと、急速に高揚するストリングスの調和が印象的で、感情の波が徐々に高まるような構成が特徴です。どこか切なくも希望を感じさせるフレーズが盛り込まれており、キャラクターたちの心情を反映させています。曲の進行に合わせて展開されるドラマティックなアレンジが、視聴者の感情を揺さぶります。この楽曲は、アニメのシーンの緊張感と感動を一層深め、ストーリーにおける重要な瞬間を象徴するような魅力が伝わるでしょう。

◾️Breeze(アニメ第1期第19話)

『Breeze』は、軽快で心地よいリズムが特徴の楽曲で、(K)NoW_NAMEのテクニカルなメロディーとアレンジが光る一曲です。第19話で登場し、ヨルの活躍するシーンで爽やかな風を感じさせるような音楽が、物語に穏やかな彩りを加えています。ピアノとギターを中心に、シンプルでありながらもどこかドラマチックな響きを持つメロディーが展開し、まるで静かな夜の風のように心地よい流れを作り出します。歌詞には、静かな希望と安心感が込められており、聴いているだけで穏やかな気持ちになれるような、温かい感情を引き出します。そのメロディーの美しさと軽快さが、アニメのシーンにマッチし、視聴者にリラックスした気持ちを与えるとともに、物語の深みを残します。

◾️子守唄 / ヨル・フォージャー（早見沙織）

ヨル・フォージャー（早見沙織）による優しくも切ない歌声が特徴的な楽曲『子守唄』。アニメ『スパイファミリー』の第24話で流れ、ヨルが母親としての一面を見せるシーンを一層感動的に演出しています。大切な人への愛情や守りたいという強い思いが込められており、ヨルが一見強さの中に隠す母親としての温かさを表現しています。曲のアレンジはシンプルでありながら、彼女の感情を深く引き出すように作られており、穏やかなピアノのメロディーと共に心に染み入るような印象を与えます。早見沙織の優しい歌声は、聴く人の心を穏やかに包み込み、物語の中でヨルの複雑な感情をより一層強く感じさせます。『子守唄』は、ヨルの母親としての一面を描いた重要な楽曲であり、物語に温かみと感動を加えています。

◾️Little steps(アニメ第2期第27話)

『Little steps』は、(K)NoW_NAMEによる軽快でメロディアスな楽曲で、アニメ第2期第27話に登場します。この曲は、ダミアンが小さな一歩を踏み出す瞬間にぴったりの、希望に満ちたリズムが特徴です。イントロから心地よく響く音楽が、前向きなエネルギーを感じさせ、物語の中で一歩ずつ成長していくキャラクターたちを象徴しています。メロディーはシンプルながらも、聴いていると自然と元気をもらえるような力を持っています。小さな努力を積み重ねて前進していく様子を描いており、日常の中で感じる希望を表現しています。この曲は、視聴者に励ましを与え、物語のメッセージを強く感じさせる楽曲です。

◾️Garden(アニメ第2期第33話)

壮大かつ美しいメロディーが響き渡る『Garden』。アニメ第2期第33話で使用され、船上でバトルを繰り広げる場面で登場人物の感情が流れるシーンを見事に支えています。深いベースとピアノのメロディーが絡み合い、聴いている者に強い印象を与えるでしょう。心の中の葛藤や、過去の記憶と向き合うことで育まれる静かな強さが描かれています。特に「庭」というテーマが象徴的で、心の中にある場所での成長や変化が歌われているのが特徴。この曲は、ヨルが何かを乗り越えようとする姿を反映させており、視聴者に深い感動を与えるでしょう。

◾️Until the End(アニメ第2期第34話)

アニメ第2期第34話に登場する楽曲『Until the End』。この曲は、物語の中でヨルと刀使いが戦うシーンで使用されており、決して諦めない強い意志を感じさせる瞬間にぴったりです。迫力のあるドラムと緊迫したメロディーが特徴的で、物語の緊張感を一層引き立てます。歌詞は、何かを守るために戦い続ける決意と、それに伴う苦悩を描いており、感情的な高揚感を与えます。この曲が流れるシーンでは、視聴者がキャラクターの思いに共鳴し、物語の深みに引き込まれます。『Until the End』は、物語の中で非常に重要な瞬間を彩り、視聴者に強い印象を残す楽曲です。

◾️uneven fruit(アニメ第2期第35話)

爽やかなリズムと軽快なメロディーが特徴的な楽曲『uneven fruit』。アニメ第2期第35話で使用され、豪華客船の護衛の仕事を無事に終えた、アーニャとロイドが停泊するリゾート島でヨルと合流する場面で流れます。曲のイントロから軽やかなビートが心地よく響き、聴く者を自然と前向きな気持ちにさせます。楽器のアレンジもシンプルでありながら、耳に残るメロディーが印象的です。歌詞は、不安定さや不完全さを抱えながらも、それを受け入れて進んでいこうとする気持ちが込められており、爽やかな中にもどこか力強さを感じさせます。『uneven fruit』は、その爽やかなサウンドと共に、登場人物たちが挑戦に向かっていく勇気を後押しする楽曲となっており、物語に明るいエネルギーを加える一曲です。

まとめ

アニメ『SPY×FAMILY』では、緻密に描かれるストーリーや魅力的なキャラクターたちに加え、作品の世界観を深く支える音楽も大きな見どころです。オープニングやエンディング、劇場版の主題歌、挿入歌のすべてにおいて、作品の空気感や登場人物の心情が丁寧に表現されています。どの楽曲も、ただ映像を彩るだけでなく、物語の流れやキャラクターの成長と密接に結びついており、一つひとつのシーンに特別な意味をもたらしています。これから『SPY×FAMILY』を楽しむ方はもちろん、すでに視聴済みの方も、音楽に注目することで新たな魅力を発見できるはずです。

笑いあり、涙あり、ハラハラドキドキの展開を音で追体験。場面ごとの感情が伝わる名曲をたっぷり収録！